＜よければ少し、私の昔話にお付き合いください＞

学生時代は、自分では「暗黒時代」だと思っています。
学校に行っているだけで、無気力、無欲。
自宅では厳格な父が怖くて、でも自分で何か行動できるような行動力も無かった。
「皆、居なくなっちゃえば良いのに」などと思いつつも、親に頼って実家で生活している自分にもムカ付いていました。
アウトローは嫌だが、でも優等生にはなれない…そんな中途半端な存在が、学生時代の私でした。

その後、何とかギリギリで靴の製造・販売をする商社に入社することが出来ました。
そこでは「皆でお店を作っていく」というチーム感が心地よく、商品開発やリサーチを皆で相談をして、一から作っていく充実感がありました。
しかし、給料はとても安かったですね。それでも、全く苦になりませんでした。
暗黒の学生時代と比べれば、なんて幸せな場所なんだろう、そういった満足感を感じていました。
人の価値はお金じゃありませんよね。環境はとても重要だと思いました。

しかし、6年ほど務めたところで状況は一変します。
社長が交代し、社内のシステムや人員配置が大幅に変わりました。
とても良い人だった店長がクビになってしまい、自身もお世話になっていた会社の寮を追い出されてしまいます。
すぐに、楽しい職場ではなくなってしまいました。

その後仕事を辞め、別の再就職先というご縁を頂きます。
今思えば、この時が人生で最悪の時期だったと思います。
この会社は先物取引を扱う会社で、私は営業マンをしていました。
この会社が、今で言う「ブラック企業」だったのです。
最初は「資産運用＝人の為になる仕事だ！」などと思っていたのですが、とんでもない。
実際は「お金がなくても搾り取れ！」という仕事だったのです。

この時に、今の私の原点となる気持ちに気づきました。
「仕事は人の役に立つべきだ！」

廃人になりかけていた私でしたが、命からがらその会社を抜け出すことが出来ました。

前職であまりにも消耗してしまっていた私は、その後空白の一年間を過ごします。
いわゆる、ニート生活というやつです。
失業保険をもらって居ましたし、前職は給料が高く、使う時間が無かったので貯蓄だけは十分にあったのです。
旅行に行ったり、欲しいもの、美味しい店、様々な散財をしました。

そんな生活の中でより強く思ったことが以下の2点でした。
　・自分の為でなく、人の役に立ちたい
　・もう、嫌な仕事は絶対にしたくない

そんな時、柔道整復の業界と出会います。
当時「独立したいな」と思っていたところで、この業界が独立しやすいと言われていたことが理由の一つ。
もう一つの理由は、「分かりやすく、人のために出来る仕事だな」と思ったからです。
そして29で業界入りし、学校に通い資格を取得しました。

仕事をしながら様々な資格を取得しましたし、念願かなって自身の整骨院を経営することも出来ました。

そんな、「ようやく落ち着いた人生を手に入れた」と思った矢先でした。体にとてつもない違和感を感じ、這うように病院に行くと「ヘルニアだ」と診断されるのです。私は自身に専門知識がありますから、これはおかしいぞと、他の様々な病院にも行ってみたのです。
「突然歩けなくなる」この恐怖は、何とも言い表せないものでした。

＜こんな風に、毎日白昼夢のような状態で人生の回想をしていました＞

そして寝たきりの状態にたどり着きます。時間はたっぷりありましたから、あらゆる自分の感情と対峙することになりました。

疲れているのに眠れない中で、薬の睡眠作用で時折眠れる事がありました。気を失っている、と言っても差し支えない状況でしたが、私にとっては貴重な睡眠の時間でした。

「二度と立ち上がれなかったらどうしよう？」

「この先どうやって行きていけば良いのか…」

正直な所、私自身は自己認識が高い人間ではないし、人付き合いも得意ではありませんでした。
それでも、「この原因不明の症状は絶対に治す！！俺は生きてやる！生きたい！！！！」そう思えた事が自分でも不思議でした。

極限状態になると、思考が単純化するのかもしれません。
生きるか死ぬか、どちらが良いですか？
こんな選択を迫られることは、恐らく人生で一度もありません。

人生において、「選ぶことが出来ない」事も多く有るでしょう。それでも、自分の感情だけは常に、自分で選ぶことが出来ます。

私にとっても、この選択はとても重要な意味がありました。
原因不明の症状が改善に向かい出したのです。
私は「自分が生きたいと強く思った事」が要因だと考えています。

しかし、道のりは過酷なものでした。
少しずつ体が動くようになったものの、動いていなかったので筋力が落ちてしまっていたのです。
それからはリハビリの日々でした。私はこの時の経験は、さながら「赤ちゃんからやり直した」様に感じています。
立てずに転がっていた所から、ハイハイを始め、腕と膝がとても痛かった。ハイハイもまともにできなかったが、とにかく「歩けるようになるため」には避けては通れない第一関門でした。ようやくハイハイができるようになると、次は掴まり立ち。

最初は壁に体重を預けて、掴まって「立ち上がるだけ」です。
足に力が入らず、何度もよろけてしまうし、何度も立ち上がるのは本当に苦痛でした。
それでも、毎日続けていると結果は出るものなんだなと、この時大きく実感しました。

掴まり立ちが出来るようになれば、次は掴まり歩きです。
平行棒の様な所で左右に手すりがあるところを、行っては帰り、行っては帰り…
これも、よろけてしまう度に看護師の方に多大なお世話をかけてしまいます。

人に迷惑をかけたくないと思う一方、それ以上に「今まで当たり前のようにやっていたことを、もう一度出来るようになりたい」その一心で毎日続けました。…そうして、今再び自分の足で歩くことが出来、友人とお酒を交わし、自身の事業を拡大し、人を笑顔にする事が出来ます。